60000アクセス記念句会
北野岸柳選
(天) 採点を終えて賢治は帰らない  敬一
(地)  風 さくら 森山良子 直太郎 茶っ茶
(人)   今更と思うけれども帯を解く もくっぴ
五客
1 明日と契約する僕の代理人 野村辰秋
2 点線を塗りつぶす時君のこと 山本 トラ夫
3 先生の机にたまるゴミの山 酒井可福
4 ひと色もあれば余生はこと足りる 山本 トラ夫
5 孫の絵のたこが上手にゆで上がる 酒井可福
j前抜き
1 完璧な論理だ赤を入れてやれ 加藤鰹
2 タバコくださいと少女の供述書 野村辰秋
3 おとこには持たせちゃダメよ紐の端 ひとり静
4 自画像のどこに塗ろうか赤い色 松尾冬彦
5 残響にさらわれそうになっている 赤松ますみ
6 こいぶみにしっかり吹きかける呪文 赤松ますみ
7 道端で寝ると犬まで横を向く 板垣孝志
8 お目付けがいるので今日は飛べません 朱鷺
9 パイプカット社会保険は効くのかな 加藤鰹
10 諦めることも大切かもしれぬ 真田義子
11 構図まだ決らずゴミばかりが増え 金盞花
12 わたくしの生きた印はなんだろう 中前棋人
13 点火する恋の雫はそのままに 茶っ茶
14 ほどほどに削り甘めの自己評価 高橋杏仁
15 よし決めた今日から君のヒモになる 松尾冬彦
16 任期満了 都合よくあしらわれ キンモクセイ
17 ロボットの犬が鎖を切る夜明け 板垣孝志
18 薄くなる昭和を赤ペンでなぞる 荻田飛遊夢
19 赤ペンの×が体のあちこちに こはらとしこ
20 本性を見抜けないまま死別する 五月猫
21 剥き出しのワタシ情念だらけです 荻田飛遊夢
22 無縁です姥捨て山の鉛筆は 万年青
選後評
 題詠でも「付かず離れず」が要求されますが、印象吟ではさらに「課題」と「句」
の間の距離感が難しくなります。  エロチィックな印象は私も感じましたが、直截
的に句にしてしまうのでは、猥褻感ばかりが伝わってきてしまいます。その点、人位
の「今更と」は時間を取り込んだドラマが見えてきました。
 地位の「風 さくら」は、課題からのジャンプ力がありました。
 天位の「採点を」も、課題にドラマの導入口を見つけたことが、見事な距離感を感じました。
 初めての経験、ありがとうございました。
60000アクセス記念句会
松尾冬彦選
(天) ゆっくりと剥がされてゆく羞恥心 山本 野次馬
(地)  脱皮する綺麗な蝶になるために  敬一
(人)   諦めることも大切かもしれぬ 真田義子
五客
1 過去形の愛はやわらか朱に染まる 高橋杏仁
2 ひと色もあれば余生はこと足りる 山本 トラ夫
3 ゆびきりを風にさらりとかわされる 赤松ますみ
4 散り際を悟っているな曼珠沙華 鹿野太郎
5 ほどほどに削り甘めの自己評価 高橋杏仁
j前抜き
1 外は雨昨日の悔いを思い出す 真田義子
2 少子化へ芋虫くるり脱皮する 佐野由利子
3 脱皮した形後悔せず生きる 孝井 栞
4 点火する恋の雫はそのままに 茶っ茶
5 わたくしの生きた印はなんだろう 中前棋人
6 お目付けがいるので今日は飛べません 朱鷺
7 玉ねぎのどこまで剥けば愛ですか キンモクセイ
8 二重螺旋絡んで父の叱咤乞う 荻田飛遊夢
9 何枚も仮面を持っているオンナ  五月猫
10 アリバイはスルスルスルと崩れだす 朱鷺
11 こいぶみにしっかり吹きかける呪文  赤松ますみ
12 一本の糸になるまで活かされる 杵島太郎
13 メール来る昨日のことは内緒だよ 真田義子
14 思い出をくるくる剥がす爪の先 佐野由利子
15 赤点で泣いた青春ブーメラン   鹿野太郎
16 夢の中今も出てくる追試験 鹿野 椿
17 人生の誤算を知った鉋屑 茶っ茶
18 剥き出しのワタシ情念だらけです 荻田飛遊夢
19 袈裟懸けに斬られています赤ペンに ひとり静
20 薄くなる昭和を赤ペンでなぞる 荻田飛遊夢
21 おとこには持たせちゃダメよ紐の端 ひとり静
22 こんにちは久し振りだね大ミミズ 鹿野 椿

選後評

この絵から何を連想するかは、100人いれば100の発想があって当然。
私には思いつかないようなユニークなものがいっぱい出てきました。
「大ミミズ」「砲弾」「台風の目」「ゆびきり」「諦め」「パイプカット」
等々・・・。
とても楽しく選をさせていただきました。
絵を説明している句、破調でリズムの悪い句(結構ありましたよ)、ムリな
状況設定の句、エロ系(エロスならいいんだけどね!)などは没にしました。
全92句から30句も入選させなければならず、やや甘い選になった嫌いが
あります。
入選句数を決めないか、30句以内とするか、

60000アクセス記念句会
山本トラ夫選
(天) タバコくださいと少女の供述書 野村辰秋
(地)  薄くなる昭和を赤ペンでなぞる 荻田飛遊夢
(人)   自画像のどこに塗ろうか赤い色 松尾冬彦
五客
1 わたくしの生きた印はなんだろう 中前棋人
2 糸一本ひいたら星になる話 キンモクセイ
3 脱皮した形後悔せず生きる 孝井 栞
4 ほどほどに削り甘めの自己評価 高橋杏仁
5 剥き出しのワタシ情念だらけです 荻田飛遊夢
j前抜き
1 孫の絵のたこが上手にゆで上がる 酒井可福
2 赤点がなんだ生涯学習さ もくっぴ
3 少年の過失は赤で囲まれる 杵島太郎
4 ゆっくりと剥がされてゆく羞恥心 山本 野次馬
5 台風の目の中に居て策を練る  金盞花
6 赤えんぴつ残して神はいなくなる ひとり静
7 一本の糸になるまで活かされる 杵島太郎
8 メール来る昨日のことは内緒だよ 真田義子
9 過去形の愛はやわらか朱に染まる 高橋杏仁
10 外は雨昨日の悔いを思い出す 真田義子
11 夢一夜朱で描く二人きりの嘘 川島五貫
12 人生の誤算を知った鉋屑 茶っ茶
13 完璧な論理だ赤を入れてやれ 加藤鰹
14 残響にさらわれそうになっている 赤松ますみ
15 思い出をくるくる剥がす爪の先 佐野由利子
16 構図まだ決らずゴミばかりが増え  金盞花
17 玉ねぎのどこまで剥けば愛ですか キンモクセイ
18 取っといてみても結局ゴミである 佐野由利子
19 パイプカット社会保険は効くのかな 加藤鰹
20 ゆびきりを風にさらりとかわされる 赤松ますみ
21 諦めることも大切かもしれぬ 真田義子
22 今更と思うけれども帯を解く もくっぴ
選後評 (天)タバコくださいと少女の供述書
 作者のフィクションと思いますが、現代の痛ましさが追ってくる
何かあると「心の闇」に逃げ込む時代に光が見えるだろうか。
(地)薄くなる昭和を赤ペンでなぞる
 生きているから風化は避けられない。良い思い出も嫌な出来事も
忘却の中に沈む。だから、時々立ち止まり、生きてきた証を確かめる。
(人)自画像のどこに塗ろうか赤い色
 人生の折り返し点を過ぎたら自画像の
輪郭は出来ていなければならない。
「時事川柳のキレ味と一般吟のコクとを両立させるのは結構大変です」
という便りを載いたことがあります。
キレのあるユーモア、コクのあるユーモアとなると更
にハードルが高くなります(私自信反省の意味を込めてですが)
ユーモアのある句が殆ど有りませんでした。
やはり川柳の基本に笑い、軽妙、酒脱を置きたいと思います。

綜合点順位
1位 荻田飛遊夢 10
2位 真田義子
2位 高橋杏仁 8
3位 茶っ茶 7
4位 赤松ますみ
5位  敬一 6
6位 野村辰秋 6
7位 山本 トラ夫 6
8位 もくっぴ 5
9位 キンモクセイ 5
10位 酒井可福 5


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